「女性のための薬草」として、世界中で愛されるよもぎ
よもぎは和菓子によく使われるので、和のイメージが強いですが、実は世界中で使われてきた野草です。韓国ではよもぎ蒸しに使われたり、化粧品に配合されたり、また、中国では古くから薬草として、ほかの生薬と組み合わせて活用されてきました。ヨーロッパでも「ハーブの女王」と呼ばれ、女性の間で愛用されてきた歴史があります。
古くからよもぎが自生する地域で共通するのは、「婦人科系の不調」に用いられること。たとえば、月経時の痛み・不正性器出血・更年期の症状・産後の養生など、女性特有の痛みや不調に良いとされています。ちなみにこうした不調は、中医学(漢方)では「血の道症(ちのみちしょう)」と呼ばれています。
よもぎで心身を整える
生薬としてのよもぎのはたらきは、「冷えによる痛み(冷痛)を温めて治す」「止血」「かゆみ止め(外用時)」など。また、よもぎの心地良い香りは生命を維持するエネルギーで、温める力を持つ「気」を巡らせます。「よもぎ茶」「よもぎ蒸し」「お灸」など、よもぎのパワーで心身を整えてみませんか?
ここからは、よもぎを使って心身を整える方法をご紹介していきます。
■「よもぎ茶」の淹れ方
漢方薬局やネットショップでは、乾燥して刻まれたよもぎが入手できます。紅茶や緑茶のように、よもぎの葉に熱湯を注ぎ5分ほど置き、葉を開かせて飲みます。効能を強めたい場合には、土鍋によもぎと水を一緒に入れて沸かし、20分程度コトコト煮て煎じ薬として飲みます。よもぎの煎じ薬はとても苦いのですが、黒糖やはちみつなど甘味を足すと飲みやすくなります。
ちなみに、煎じ薬を直接患部に塗るとかゆみや湿疹を緩和できます。
かゆみ止めとしてのよもぎの利用は、日本ではおばあちゃんの知恵袋的な民間療法ですが、漢方の本場中国では病院でも用いられています(よもぎはキク科なので、キク科アレルギーの方は使用を控えましょう)。
■体を芯まで温める「よもぎ蒸し」
よもぎ蒸しは韓国で古くから行われてきた温熱療法で、よもぎを蒸した蒸気を使い体全体を温め、不調を和らげる民間療法です。血行が促進され、たくさんの汗が出るころには、体の芯までポカポカです。発汗や香りによって、むくみの解消やストレスの緩和、不眠の改善が期待できます。日本でも試せるお店があるので、興味のある方は探してみてくださいね。
■さまざまな不調は「ツボにお灸」で改善
一般的なお灸は、よもぎの葉の裏にある白い産毛のようなもの(もぐさ)が原材料です。お灸の熱がツボから体内に伝わり、体の深い部分を温めて「気」と「血」の流れを促します。お灸やマッサージで耳にする「ツボ」は、WHOによって世界基準が定められているほど、効用が認められている漢方医療のひとつです。イライラ、おなかが弱い、便秘、腰痛、頭痛、やる気がわかないといったさまざまな不調に効くツボがあります。
3月〜5月は、フレッシュなよもぎが入手できる
よもぎの旬は3月から5月で、新芽の柔らかい部分を食用にします。この時期は寒さで眠った体を目覚めさせる苦味のある食材が多く、よもぎもそのひとつ。生のよもぎが手に入ったら、炒めものやてんぷら、おひたしなど、加熱してからいただきましょう(生のよもぎは体を冷やす作用があるので、冷えのある方は生食を避けましょう)。茹でてアク抜きすれば、冷凍保存も可能です。
生のよもぎは道端で見かけることもありますが、毒草のトリカブトによく似た形状をしているので注意が必要です。また、道端に見えても私有地の可能性もあるので、勝手に摘むのはトラブルのもと。ネットショップや販売店などで入手するのが安全です。
よもぎを試す時の注意
前述の通り、よもぎはキク科の植物なので、キク科アレルギーがある方は注意しましょう。
また、手足やおなかが冷えている方でも、ホットフラッシュやイライラ(=中医学ではメンタルの火と捉えます)がある場合には、よもぎの体を温める効能によってそれらが強くなる可能性もあります。こうした更年期の症状改善は自己判断が難しいので、心配に応じて専門家に相談してくださいね。更年期の症状については、以下の記事でも詳しく解説しています。
よもぎはコンクリートの隙間でも芽を伸ばす、生命力の強い野草。そのたくましさがエネルギーとなって、効能に現れているかのようですね。寒さでギュッとこわばった心身を、よもぎの苦味と香りにほぐしてもらいましょう♪