誰にでも訪れる更年期、あらわれ方は人それぞれ
■更年期とは
更年期とは、広い意味では卵巣機能の低下がみられる40~65歳、狭い意味では平均閉経年齢50歳前後の45~55歳の約10年間を指します。「期間」ですから始まりがあれば終わりがあり、誰もが通過する「時期」にすぎません。意外と知られていませんが、男性にも更年期はあるのです。
更年期の「症状」はさまざまで、あらわれ方にも個人差があります。いざ更年期を迎えたとき、必要以上に悩んだり不安になったりせずに済むように、「この時期はこんな症状が起こりやすい」という知識を持って心の準備をしておくことが大切です。
更年期のはじまり「月経周期の乱れ」
月経が1年以上ない場合を閉経といいますが、月経はある日突然終わるものではありません。個人差が大きく、だいたい37歳を過ぎた頃から卵巣機能の低下が始まり、卵巣から分泌される女性ホルモンの量は低下していきます。その兆しは月経周期の乱れとしてあらわれます。
■女性ホルモンについておさらい
女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンがあり、どちらもコレステロールをもとにつくられるホルモンで、主に卵巣から分泌されます。そして女性ホルモンの分泌量は脳で調整されています。
エストロゲンの分泌レベルは排卵直前に最も高く、月経がはじまる頃には低くなります。エストロゲンの分泌レベルが高い時期は肌の調子もよく、気力に満ち好調に感じられます。
排卵後は黄体がつくられ、そこからプロゲステロンが分泌されます。プロゲステロンは、妊娠のための準備と妊娠の維持に働くホルモンで、分泌が増えてくる時期は身体がむくみやすく、気分も不安定になりがちです。月経前の不調はこの時期にあらわれます。
このように卵巣から分泌される女性ホルモンによって月経周期を刻んでいるのですが、基礎体温を測ることで、身体の中のリズムを知ることができるのです。
■基礎体温について
基礎体温は、朝起きてすぐの安静時に基礎体温計を用いて、舌の下で検温します。基礎体温計は一般的な体温計よりも微細な体温の変化がわかるようになっています。
個人によってばらつきがありますが、月経周期が28日の場合、月経の1日目から排卵までの約2週間は「低温期」の期間です。排卵が起こるとプロゲステロンが分泌されて「高温期」に入ります。「高温期」は「低温期」より0.3~0.5℃ほど高く、12~14日間続きます。
■基礎体温でも更年期の“兆し”を知る
更年期に差しかかる頃は、排卵する周期もあれば、時に排卵が起こらない周期もあります。排卵が起こらなければプロゲステロンが分泌されないため「低温期」が続き「高温期」がなくなります。月経周期が乱れてくると、「低温期」と「高温期」のリズムも乱れてくるので、基礎体温を継続して測ることで、身体の中で起こっている兆しがわかります。また、基礎体温の記録はカウンセリングや婦人科受診の際に役立ちます。
■「月経周期の乱れ」は更年期以外で起こることも
月経の乱れは急激なダイエット、強いストレス、不規則な生活、子宮や卵巣、甲状腺の疾患でも起こります。いずれにしろ、月経の乱れが続くようなら婦人科など適切な専門医の診察を受けることを検討してみましょう。とはいっても、どこに行ったら良いのかすぐには思いつかないかもしれませんね。そういった場合は、「女性外来」や「更年期外来」というキーワードで調べてみるのもひとつの方法です。
更年期の始まりには、月経の異常がみられます。最初のころは月経が頻回に来るようになり、場合によっては、月経が終了した後も出血が続くこと(不正出血)があります(必ず不正出血が起こるわけではありません)。さらに進むと、月経周期は反対に長くなり2~6ヵ月ごとになります。そして1年以上月経がない状態となり「閉経」を迎えます。
※不正出血…月経周期とは異なるタイミングで出血がある場合を不正出血といいます。思春期や更年期などにホルモンバランスの乱れにより起こることもありますが、子宮や卵巣などに病気があるために起こることもありますので、医師の診察を受けましょう。
更年期にあらわれるさまざまな症状
■どうして症状が人それぞれなの?
更年期には200以上もの症状があるといわれています。さまざまな症状が起こる要因は、エストロゲンの低下による身体要因がおおもとにあり、加えて、気質要因や環境要因も影響しています。
気質要因は、生真面目で人に頼らないがんばり屋さんの性格や、ストレスの受け止め方の違いなどが影響します。環境要因は、社会や家庭環境と人間関係にあります。たとえば更年期は、お子さんの独立や親御さんの介護などの負担が大きくのしかかる世代と重なります。
これら3つの要因が重なりあうため、症状やあらわれ方、感じ方が人によってまったく異なるのです。ちなみに男性にも更年期の症状がありますが、男性の場合は必ずしも男性ホルモンの低下を伴うとは限らず、気質要因や環境要因の影響が大きく、それらが引き金となることが多いようです。
前述のように卵巣機能の低下が始まると、女性ホルモン(エストロゲン)の産生がうまくできなくなり、分泌を調整している脳のコントロールもしづらくなります。女性ホルモンの分泌を司る脳の器官は、自律神経の総合指令部でもあり、ここが乱れることは自律神経の働きが乱れるもとになります。
自律神経は体温調節や呼吸もコントロールしているため、自律神経が乱れると、ほてり・発汗・動悸などのさまざまな不快症状があらわれます。そして、エストロゲンは自律神経のバランスを保ったり、骨量を保持したり、ストレスを跳ね返したり、髪や肌のハリ・ツヤを保ったりとたくさんの働きを担っていますから、エストロゲンが減少することでさまざまな症状が生じやすくなるのです。
症状はホットフラッシュ(のぼせ)・めまい・関節痛のように身体にあらわれたり、イライラ・憂うつ・不眠などのメンタルにあらわれたり、本当にさまざまです。症状だけで考えればあちこちの医療科が関係しますが、まずはかかりつけの「婦人科」をつくって相談してみましょう。
更年期にともなう症状にはホルモン補充療法や漢方療法、カウンセリングといった方法もあります。「更年期だからしょうがない」「一過性のものだから」とつらいのを我慢することはありません。一人で悩んだり我慢したりせず、周りに話して頼ってみてください。
【チェックシートで今を知ろう】あなたの「更年期指数」はどのくらい?
更年期の概要をつかんだら、次は「自分が更年期のどの辺りにいるのか」、「症状がはじまっているか」を確認しておきましょう。そろそろかな?と思ったら、お近くの婦人科を検索しておくのもおすすめです。更年期障害治療の多くは健康保険が適用されます。
■更年期指数(SMI)
更年期指数(SMI)は、ざっくりと更年期の症状をチェックするものです。症状の程度に応じ、強・中・弱・無の中から、当てはまるものを選んでください。質問文章に挙げられている症状のうちどれかひとつでも強く感じられれば“強”を選んでください。あまり深く考えず、直感で選ぶのがコツです。
合計点数が低くてもつらい症状がひとつでもあるなら、婦人科を受診するのがおすすめです。
簡略更年期指数(SMI)
(出典)小山 嵩夫.更年期婦人における漢方治療 :簡略化した更年期指数による評価. 産婦人科漢方研究のあゆみ. 1992;9:30-4.
結果
<0~25点>
心身ともに良い状態で過ごされています。年1回の健康診断を受けて、今の状態を知っておきましょう。
<26~50点>
バランスの良い食事、適度な運動を心がけ、無理のないライフスタイルを送って更年期障害の予防をしていきましょう。
<51点以上>
産婦人科または更年期外来、閉経外来の受診をおすすめします。医師と相談のうえ、適切な方法で更年期と向き合っていきましょう。
80点以上など特に点数の高かった方は、計画的に更年期症状と向き合う必要がある場合もありますから、自己判断せず、医師の判断を仰ぐことをおすすめします。
更年期はみんなが通る道。みなさんの悩みや不安を解消するために、生活・医療・相談センターなどたくさんの手立てが整っています。自分の状態を知ることが、これからを健やかに過ごす第一歩。次回は、「【後編:対策】もう一人で悩まない!更年期(メノポーズ)との上手な付き合い方」をご紹介します。
更年期はみんなが通る道。みなさんの悩みや不安を解消するために、生活・医療・相談センターなどたくさんの手立てが整っています。自分の状態を知ることが、これからを健やかに過ごす第一歩。次回は、「【後編:対策】もう一人で悩まない!更年期(メノポーズ)との上手な付き合い方」をご紹介します。