そもそも漢方薬とは?
漢方薬はいくつかの生薬の組み合わせでできています。本来、その人の体質や生活習慣を踏まえて調合を決めるものですから、「風邪なら◯◯」、「頭痛なら△△」という決まった処方がないことに注意が必要です。
カゼひとつとっても、発熱・寒気・ノドの痛み・汗・筋肉のこわばりの有無などを細かく観察したうえで、適切な処方が選ばれます。
たとえば、寒気からくるカゼに効く「葛根湯(かっこんとう)」は、体を温めて冷えを発散させる配合です。したがって、寒気のある症状には向きますが、反対に喉が赤い・熱っぽい(実際の体温ではなく体感として)といった「熱」イメージの症状に用いれば、「熱」をさらに温めてしまって逆効果となるのです。
漢方薬を服用する際の注意点
■自分の症状・体質に合ったものを選び、服用する
漢方薬は体質やツラさの根本にぴたりと合えば高い効果を発揮します。特に、症状はあるのに病名がつかないような更年期の不調(不定愁訴)は得意分野で、おどろくほど多くの処方があります。
しかし、先の風邪薬のように、合わないチョイスはかえって症状を悪化させることも……。いまはドラッグストアでも漢方薬が手軽に購入できますが、ご自身で選ぶ時もパッケージをよく読んで、悩みや体質にあっているかをチェックすることが大切です。
改善しなかったり、別の症状があらわれたりした場合は、自己判断で飲み続けずにかかりつけ医や薬剤師などに相談してみてくださいね。
※薬を併用する場合、また妊娠・授乳中の方は必ずかかりつけ医や薬剤師などに相談してください。
■飲み方について
原則として、水または白湯で飲むようにしましょう。ジュースやお茶などは効果に影響を及ぼす可能性があります。
飲むタイミングについては、食前(食事の20~30分前)、食間(食事を終えてから約2時間後)、食後(食事が終わって20~30分後まで)などの用法や、薬剤師などの注意喚起を守って飲むようにしましょう。
次からは、症状と体質から探せる代表的な処方をご紹介します。
とにかく疲れる、だるい、元気が出ない
■補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
元気を補うための代表的な処方です。補中とは中(胃腸)を補うことを意味し、食欲不振があって、脈が弱く、全身倦怠感がある方に向いています。
気力がわかない、だるくて疲れがとれない、胃腸虚弱に用いるほか、夏バテ、術後や病後の体力低下や衰弱にも処方されます。
■十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
名前のイメージどおり、10種類の生薬が全身の状態を整えて気力・体力を補います。全身が弱っている方、まぶたの裏が白い・手足が冷えるといったような貧血症状がある方に向きます。ただし、著しい胃腸虚弱の方には不適です。
全身倦怠感、皮膚の乾燥、寝汗、貧血、手足の冷え、術後や病後の体力低下・衰弱など、幅広い症状に用いられます。
ホットフラッシュや発汗
■加味逍遙散(かみしょうようさん)
更年期に悩む方が一度は聞いたことのある処方名で、女性の不定愁訴に非常によく用いられています。のぼせと精神不安のどちらもある方に適しています。ただし、著しい胃腸虚弱の方には不適です。
ホットフラッシュ、肩こり、頭痛、イライラ、不安、ストレスによる心身の不調(頭痛やめまい、不眠など)に用いられます。
■桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
「血」の滞りを改善する処方です。体力が中程度(生活に支障のない体力)で赤ら顔、下腹部が張る感じ、のぼせるのに足は冷えるといった方に向いています。体力の低下時は胃の不調があらわれやすくなるので控えましょう。
ホットフラッシュをはじめとした更年期障害全般、下半身の冷え、頭痛・肩こり・めまいに。また、クマ、シミ、湿疹などの皮膚トラブルにも用いられています。
冷えをともなう不調
■当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
「血」の不足を補って、めぐりを改善し、体をあたためます。冷えがあり、寒がり、やせていて、顔色が悪い(白い)方に向いています。胃腸虚弱の方は使用に注意が必要です。
冷えをともなう月経異常、頭痛・頭重、倦怠感のほか、肩こり、めまい、足腰の冷えに。また、しびれや神経痛にも処方されます。
■当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
「血」の不足を補って、めぐりを改善します。冷えによる痛みによく用いられる処方です。体力がなく、手先・足先の冷えがひどい方に向きます。胃腸虚弱の方は使用に注意が必要です。
手足の冷え、冷えると悪化する下腹部の痛みや神経痛、頭痛、めまいに。冷え性の女性の不定愁訴の改善にも向いています。
身近に手にとれる漢方薬は、不調の症状や自分の体質を正しく把握することで、心強い味方になります。漢方の力を借りたいなと思った際には、本記事の情報を参考に取り入れてみてください。それでも改善しなかったり、別の症状があらわれたりした場合は、自己判断で飲み続けずにかかりつけ医や薬剤師などに相談するようにしましょう。