更年期は「汗」がツラい人が多い
ホットフラッシュやのぼせは、更年期の代表的な症状のひとつです。冬でも急に暑く感じて汗がとまらないという方もいれば、「昔よりちょっと暑がりになったかも?」くらいの方もいて、症状の軽重は人や季節によります。夏は特に発汗量が増えるので、汗じみや汗のニオイが気になりますよね。
■そもそもなぜ汗をかくの?
人間が必要なエネルギーを作り出す際に、体内で代謝が行われ、熱を発生します。その熱を下げるために、汗腺(かんせん)から汗を発生させ、体温を下げるのです。気温が高い時に汗をたくさんかくのも同様の理由です。
つまり人間にとって汗は重要な「体温調節の役割」を担っています。
脇汗って治療できるの?
夏の時季、特に女性は脇汗が気になる方が多いのではないでしょうか。
そういった汗の悩みは、皮膚科で対応が可能です。多汗症(通常の人よりも汗が非常に多く、そのために生活に支障がある状態)と診断された場合には、いくつかの治療が選択できます。
発汗量を抑える塗り薬やシートなどの外用薬や、マイクロ波照射治療、症状が重いケースでは汗を抑える作用が強いボトックス注射が保険適用となることもあります。また、汗腺の働きを止めたり、取り除く治療もあります。
ただし、保険適用には条件があり、注射は痛みをともなったり、手術は傷跡が残る可能性もありますので、そういったことも考慮して検討しましょう。
ちなみに、前述で『人間にとって汗は重要な「体温調節の役割」を担っている』とお伝えしましたが、汗腺を切除するような治療をしても大丈夫なのか?と気になる方もいらっしゃるかもしれません。実は人間の体には全身で200万~500万(通常働いているのは半数程度)の汗腺があり、たとえば脇の下にあるのはそのうちの約2%とされています。その2%をなくしても特に影響することはないと言われていますのでご安心ください。
とは言え、まずはお近くの皮膚科医に相談してみましょう。
また、皮膚科では、脇汗だけでなく、手や足、顔、頭の汗の悩みなども相談できます。さらに、汗の悩みだけではなく、イライラ、不眠、耳鳴り、頭痛、動悸、倦怠感、不安など、複数の症状があるのなら、婦人科や更年期外来、漢方薬局等を受診するのもおすすめです。
生活習慣の改善で汗は気にならなくなる?
生活習慣の見直しは、現在の体調はもちろんのこと、将来にも良い影響が期待できるので、ぜひ定期的に行っていただきたいことです。たとえば食習慣では、刺激物・冷たいもの・味の濃いものを控える、ドカ食い・一気食いは避ける、胃にやさしいものを選ぶなど、ほんの少し意識するだけでも違ってきます。
また、適度な運動は自律神経を整えますから、継続することでホットフラッシュの改善も期待できます。たとえば、ウォーキングなどの会話ができるくらいの負荷で、少し汗ばむくらいの運動がおすすめです。
KIREI Cruiseではウォーキング時に気をつけるべきポイントをまとめた記事もご紹介しています!
■ご機嫌でいる方法をたくさん持とう
更年期は女性ホルモンの低下によって身体に負担がかかっているところに、仕事・家事・介護・子育てなど責任が重たい時期と重なるため、ストレスを抱える方も多いはず。食事・運動・睡眠といった暮らしの基本を見直しつつ、気分転換の方法をたくさん持って、こまめに発散するように心がけてみてください。
脇汗に対する簡単ケア技4選
■<1>市販の制汗剤&デオドラント
制汗は汗を抑える効果、デオドラントは消臭効果を指していますが、最近はどちらも兼ねるものが多く販売されています。これらの市販のアイテムの効果は一時的ですが、日常のケアとしてうまく活用してみましょう。
■<2>汗ふきシート
汗のベタつきやニオイが気になる時に、出先でも重宝するのが汗ふきシート。ひんやり冷感タイプや、大判タイプ、持ち運びやすいコンパクトサイズなど、好みに合うものを探してみてください。拭いた後に扇子やうちわであおぐとスーッと涼しくなりますよ。
■<3>汗取りパッド
汗ジミを物理的に防いでくれるので、安心感のあるお出かけアイテムです。大事な洋服の黄ばみ防止にもなります。手軽な使い捨てタイプや、洗って繰り返し使えるタイプもあります。
■<4>体温調整しやすいファッション
暑ければさっと脱げて、肌寒い時にさっと羽織れるような、体温調整しやすいファッションを心がけるのも良いアイデアです。薄手のカーディガン、ストール、機能性インナーなど、デザインや性能から自分に合うものを楽しみながら探してくださいね。
一人だけ汗をかいて恥ずかしいと感じたり、人の目が気になったりと、汗のお悩みはツラいものです。汗をかくこと自体がストレスとなり、悪化することもあります。一方で、診断を受けたり、ご自身の対策が功を奏したりすることが安心につながって、症状が軽減することもよくあります。市販のアイテムを活用しつつ、それでもツラい場合には病院を受診することも検討してみてくださいね。
- ●監修者
藤本智子(ふじもとともこ) -
池袋西口ふくろう皮膚科クリニック 院長。赤ちゃんから高齢の方まで、地域に暮らすあらゆる皮膚のトラブルを診察しており、特に汗の疾患に力を入れている。皮膚病になる前の未病・予防の視点からもアドバイスを行う。症状や悩みに寄り添った丁寧な診療を心がけ、女医・皮膚科専門医による2診体制で診療を行っている。
日本皮膚科学会認定専門医/医学博士/東京医科歯科大学皮膚科臨床講師/日本発汗学会理事/日本臨床皮膚科医会 常任理事