伝統芸能、いきなり体験するにはハードルが高い……?
■改めて「日本の伝統芸能」とは?
伝統芸能とは、日本に古くから伝えられてきた芸能のことを言います。広義では和歌や俳句、工芸、茶道や書道などの芸道、囲碁・将棋なども含みますが、主には次のような演劇・音曲・演芸を指すことが多くなっています。
音曲
笙(しょう)、篳篥(ひちりき)などの楽器で知られる「雅楽」、筝(こと)、琵琶、尺八、三味線などの楽器で知られる「邦楽」、三味線や琵琶の演奏に合わせて物語を語る「浄瑠璃」、民謡や長唄などで知られる「唄」といった芸能が知られています。
演劇
演者が能面をかけ、楽器演奏に合わせて演じる「能」と、セリフ中心の喜劇である「狂言」、さまざまな伝統芸能の要素を含む総合芸術と言われる「歌舞伎」、浄瑠璃と人形で物語を演じる「人形浄瑠璃(文楽)」といった芸能が知られています。
日本舞踊
歌舞伎の踊りをルーツとする「歌舞伎舞踊」が有名で、日本舞踊と言えば歌舞伎舞踊のことを指すこともある一方、広義では「神楽」や「猿楽」、「盆踊り」など民俗芸能と関わりの深い舞踊も含まれます。
演芸
主に歴史にちなんだ物語を独特の調子で読み聞かせる「講談」、声色や身振り手振りを駆使した滑稽な話で観客を笑わせる「落語」などの話芸が有名ですが、日本古来の手品・奇術である「手妻(てづま)」、紙をはさみで切り、即興でさまざまな切り絵を作る「紙切り」、木製の映写機でガラスに描いた絵を映し出す「写し絵」なども、寄席を彩る「色物」と呼ばれる演芸の一種です。
■初心者が気軽に楽しめる公演やサービスも増えている!
初心者の方が伝統芸能を体験したいと思っても、「内容を理解するのが難しそう」、「長時間の公演が多い」、「暗黙のマナーがありそう」など、詳しい人に案内してもらったり、レクチャーを受けたりせずに挑戦するには心配なことが多いかもしれません。
ただ、こうした「ハードルの高いイメージ」を気にしている伝統芸能の関係者は決して少なくないようです。それもあって、最近は初心者が気軽に体験できるカジュアルな公演や、レクチャーを受けられるイベントなどが増えてきています。
まず伝統芸能に触れてみるのにおすすめの方法4つ
ではここで、初めて伝統芸能に触れてみるのにおすすめの方法4つをご紹介しましょう。
■「初心者向け・入門講座・音声ガイド」を探してみよう
来日観光客が増えていることもあり、演者によるトークなどの解説プログラム・講座がある公演や、舞台裏を見学できるバックステージツアー付き公演、所作などを体験できるワークショップなどはより充実してきていています。周りもみな初心者だと思えば、気後れせずに楽しむことができますよ。
専用劇場などでは、公演を観ながら解説を聞くことができる音声ガイドなどを用意していることもありますから、ぜひ利用してみましょう。
■公共ホールやお寺、自治体・商店街などのイベント公演に足を運ぶ
公共ホールで開催するイベント公演には、その芸能のファンだけでなく、地域住民など幅広い客層が訪れるのが一般的です。それだけに歌舞伎座や能楽堂、寄席などいわゆる専用劇場での公演にいきなり行くよりも、入りやすくわかりやすい公演が多くなっています。
また、地域住民のためにと、お寺や古民家施設などを会場として行われる公演も観られます。落語など広い舞台や大掛かりな装置が必要ない芸能だと、商店街や文化活動に力を入れている店のイベントにゲストとして呼ばれることも。お祭りのステージなど通りすがりでフラッと観に行ける形式も多く、おすすめです。
■ミュージアムでの公演も入りやすく、予習のきっかけにもなる
博物館や歴史資料館では、企画展の内容に縁のある伝統芸能や、ご当地に縁がある伝統芸能のイベント公演が催されることがしばしばあります。公共ホールやお寺などと同じで客層が広く、入りやすい公演が多いので、まずはこういった場で慣れてみるのもおすすめです。
もし時間があれば早めに会場を訪れ、その芸能と関連の深い展示物なども鑑賞しておくと、理解が深まりさらに楽しめるようになりますよ。
■映画館で伝統芸能を楽しむのも面白い!
歌舞伎は大掛かりな公演が多く、ここまでで紹介したような身近な場ではなかなか観られない芸能のひとつ。一方、全国の映画館では歌舞伎の舞台を撮影した映像「シネマ歌舞伎」を随時上映しています。見せ場をアップで見られるので初心者にもやさしいですし、座席について劇場気分を味わいながら観られるのは映画館ならではです。
シネマ歌舞伎のように伝統芸能の公演そのものを撮影したプログラムのほかにも、伝統芸能が劇中に登場するドラマ映画、伝統芸能について解説しているドキュメンタリー映画など、お目当ての芸能がテーマになっている映画を観てみると理解が深まるきっかけになりますよ。
興味のある芸能の入り口としてこうした公演を探すのも良いですし、近隣で開催される、料金もお手頃な公演などは「それまで知らなかった芸能分野の魅力を体験するきっかけ」として試しに覗いてみるのもおすすめです。また、漫画やアニメ原作を題材とする公演も増えてきているので、そういったものをきっかけにするのも良いかもしれません。
行きたい公演を探すにはWeb検索も手軽で良いですが、街角のチラシやフリーマガジン、地域の広報誌などもチェックしてみると、足を運びやすい近隣でのイベントが見つかるはず。意外な出会いで、思わぬ趣味を開拓できるかもしれませんよ♪