「夏越ごはん」は「夏越の祓(はらえ)」にちなんだ行事食
■「夏越の祓」とは
「夏越の祓」(なごしのはらえ)は毎年6月30日、言い換えると「1年の前半の最終日」に行われる神事です。神社で、その年の前半に生じた過ちや穢れを祓って、前半を大事なく過ごせたことに感謝し、後半も無病息災で過ごせるよう祈ります。ちなみに、毎年12月の大晦日には「年越しの祓」も行われます。
そして、夏越の祓でその年の前半に生じた過ちや穢れを祓うとされる行事が、茅(ちがや、かや)の茎や葉を束にして作った大きな輪をくぐる「茅の輪くぐり」(ちのわくぐり)です。
日本神話にある「蘇民将来(そみんしょうらい)が須佐之男命(すさのおのみこと)を粟飯でもてなし、お礼に厄払いの茅の輪を授けられた」という話に由来します。一般的にはどこの神社でも自由に茅の輪をくぐれるようになっているので、経験のある方も多いかもしれませんね。
■「夏越ごはん」とは
伝統的な行事である夏越の祓にちなんで、2015年から提唱されている新しい行事食が「夏越ごはん」です。夏越の祓と同様、1年の後半を無病息災で過ごせるよう、旬を迎える夏の食材や茅の輪くぐり、邪気払いなどをイメージさせる食材が盛り込まれています。
「夏越ごはん」にはなにが必要?
■ごはんと丸い食材があればOK!
夏越ごはんのレシピには厳密な決まりはなく、「ごはん」と「茅の輪をイメージした丸い食材」があれば良いとされています。定番のレシピとしては、蘇民将来の粟飯にちなんだ「雑穀ごはん」の上に、茅の輪をイメージした「かき揚げ」を載せ、しょうがを使ったおろしダレで食べるかき揚げ丼があります。ほかにも、カレーや火を使わない、いわゆる“のっけごはん”や洋風アレンジなど、さまざまなメニューが見られます。
■旬の夏野菜で色鮮やかに
夏越ごはんの食材には、茅の輪をイメージした緑や邪気払いをイメージした赤の食材、特に旬の栄養をたっぷり含んだ夏野菜がよく用いられています。夏野菜といえば美容のためにもぜひ積極的に摂りたいところ。次は、美容成分もたっぷり含まれる「夏越ごはん」のおすすめ食材を見ていきましょう。
美容にもうれしい!「夏越ごはん」におすすめの食材
■多種多様な穀物で栄養たっぷり「雑穀ごはん」
蘇民将来がおもてなしに用いた粟は、コラーゲンの生成に欠かせない鉄分が豊富に含まれています。また、粟とともに雑穀米に入っている赤米、黒米には、若々しさを保つ抗酸化作用に優れたポリフェノールがたっぷり。雑穀ごはん全般の特徴として、血糖値の急な上昇を抑えて肥満を予防したり、食物繊維でおなかを整えたりしてくれるところも見逃せません。
■まさに夏の旬野菜「ゴーヤ」、「オクラ」
鮮やかな緑色で、輪切りにするとまさに茅の輪を思わせるゴーヤ。美肌成分であるビタミンCをたっぷり含んでいるうえ、ゴーヤのビタミンCは加熱で壊れにくいので、調理の幅も広がります。
苦みを抑えるために茹でたり、水にさらしたりすると、ビタミンCが水に流れ出るので要注意。この苦味成分も食欲を促し、肝機能を高めてお肌を健やかにするので、ぜひそのまま調理してみましょう。
オクラのねばり成分のひとつであるペクチンには、コレステロールの吸収を抑え、血糖値の上昇を緩やかにして肥満を予防する働きがあります。かき揚げなどにしたり、刻んでネバネバを味わったりと、食べ方がいろいろあるのもうれしいですね。
■赤い色は邪気払いにも、美容にも最適な「エビ」
邪気払いを思わせる赤い色をもった「エビ」。この色はアスタキサンチン酸という天然色素によるもので、若々しさを保つ抗酸化作用を有しています。紫外線によるお肌の疲れをフォローしたい方にもおすすめの食材です。
■冷房で冷えがちな体を温める「生姜」
辛味成分の働きで、体の冷えを防いでくれる生姜。冷房の効きすぎなどで手足が冷えがちな方にはうれしい食材です。夏は特に生のまますり下ろして薬味に用いることの多い食材ですが、実は、生の生姜は一時的に温まるだけで、その後は逆に体を冷やすことも。加熱調理するか、乾燥生姜を使うと、体の中からしっかり温めてくれます。
ここでご紹介したほかにも、トマトやパプリカ、枝豆、きゅうりなど夏越ごはんの季節においしい赤や緑の食材には栄養がたっぷり。疲労回復を助ける栄養素が多い豚肉などもおすすめです。お好きな食材や調理法を組み合わせて、ぜひ「うちの夏越ごはん」を作ってみてくださいね。