40代、キレイの旅に漕ぎ出そう
【専門家監修】「まだ早い」とは限らない!いまから始める認知症予防<知識編>

【専門家監修】「まだ早い」とは限らない!いまから始める認知症予防<知識編>

認知症予防と聞くと、私にはまだ早い……と考えていないでしょうか?実は、認知症のリスクの中には20~30年をかけて徐々に蓄積するものもあります。つまり、いまが予防の「始めどき」なのです。今回は前後編に分け、前編では「認知症の基本知識」について、後編では具体的な「いまから取り組む予防対策」について、一般社団法人 日本認知症予防学会 理事長/鳥取大学医学部保健学科 認知症予防学講座(寄附講座)教授 浦上克哉先生への取材のもと、ご紹介します。


40代~50代でも「認知症予防は他人事ではない」!

「若年性認知症」は40代から見られる

「若年性認知症」は40代から見られる

なぜ、若い世代でも認知症予防は他人事ではないのでしょうか。まず、64歳未満で発症する「若年性認知症」は、患者の数は多くはないものの、若い人では40代から見られます。

認知症の原因にはさまざまなものがあり、原因によってその種類が分類されています。その中でも特に多いと言われる「アルツハイマー型認知症」は、「アミロイドβ」というたんぱく質の一種が脳に蓄積して、脳が委縮することで引き起こされると言われます。若年性認知症の場合も原因にはさまざまなものがありますが、「遺伝的に、脳にアミロイドβが蓄積しやすい」例が多いと言われています。

若いうちから対策しておくことでリスクはより低減できる

アミロイドβは、通常脳内に発生すると不要な物質として回収・排出されます。しかし、65歳以上で発症する老年期認知症の場合、発症の20~30年前から、本来排出されるはずのアミロイドβが脳に蓄積し始め、長い年月をかけて認知症を引き起こすとされています。つまり早い人では35歳頃から、すでに認知症のリスクが積み重なり始めているというわけです。

「アミロイドβを溜めない生活」を送ることが予防のポイントに

この通り、アミロイドβが蓄積することで認知症リスクが高まります。アミロイドβ自体は脳内で作られ続けることから、40~50代のうちからできてしまったアミロイドβをきちんと排出し、脳に蓄積させない生活をすることが、認知症予防のポイントになるのです。

「認知症や予備軍かもしれない」とわかる兆候はある?

日常生活に支障の出るような「もの忘れ」は要注意

日常生活に支障の出るような「もの忘れ」は要注意

40~50代は記憶力などの衰えを自覚し始めることも多い年代です。頻繁にもの忘れをするなど「単に年齢を重ねただけでなく、認知症の傾向があるのではないか」と不安を感じることもあるかもしれません。

こんな時、たとえば「人や物の名前が出てこないけれど、どんな人や物なのかは覚えている」、「忘れ物をしてしまうけれど、どこに忘れたかはすぐ思い出せる」というような、生活に大きな支障のないもの忘れは老化現象によるもの忘れの可能性が高いと言われています。

その一方で、「人や物の存在自体を忘れてしまっている」、「物を失くしてしまい、いくら探しても見つからない」といった日常生活に支障が出るようなもの忘れは認知症による可能性が考えられます。また「昔のことは覚えているが、最近のことを忘れている」といったケースも特徴のひとつです。

セルフチェック!こんなもの忘れ・生活の変化はありませんか?

自分だけでは気づきにくい認知症予備軍の傾向をチェックリストにまとめました。ご自身や家族の様子を思い出しながらチェックしてみてください。

ここでチェックのつく項目が多いからといって、すぐに認知症の治療を始めなければならないわけではありません。ただ、より意識的に予防に取り組みたい状況なのは確かです。具体的な予防対策については後編の『【専門家監修】「まだ早い」とは限らない!いまから始める認知症予防<対策編>』を参考にしてみてください。

認知症や予備軍かもしれないと思ったら何科を受診すればいい?

認知症や予備軍かもしれないと思ったら何科を受診すればいい?

もし、自分はやや認知症リスクが高いかもしれない、すでに認知症の予備軍になっているかもしれない……と感じても、まずどの診療科を受診すれば良いのか迷うかもしれません。

「もの忘れ外来」や、「老年内科」といった専門の診療科もありますが、まだまだ少数です。浦上先生のご専門である「脳神経内科」や「神経科」、「精神科・心療内科」、「脳神経外科」などでも相談できますが、やはりどこの地域にでもあるとは言い難い状況です。
内科などですでに主治医やかかりつけ医がいるのであれば、まずそういった先生に相談して、専門医療機関を紹介していただくのがおすすめです。もしくは、市町村が医療や介護などの相談窓口として開設している「地域包括支援センター」に相談すると、適切な医療機関へ繋げてもらえます。

認知症の症状と言うと「今日が何月何日かわからなくなる」、「食事をしたことを忘れてしまう」といった重篤なものを連想しがちですが、もっと早い段階でも、チェックリストにあるようなちょっとした言動に兆候が表れてきます。そして、その段階であれば正しい予防策をとることで“引き返す”こともできます。

後編では、症状や兆候が出ないうちからぜひ取り組みたい予防策についてご紹介します。

●監修者
浦上克哉(うらかみかつや)

1983年鳥取大学医学部卒業後、神経内科を専門とし2001年より鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座・教授を務め、2022年4月より現職。
日本認知症予防学会理事長、日本老年精神医学会理事、日本認知症予防専門医。アルツハイマー型認知症および関連疾患を専門とし、外来での診療、予防、ケアなど総合的に認知症と取り組む。
また、認知症早期発見のためのタッチパネル式コンピューター「物忘れ相談プログラム」等の機器開発、アロマによる認知症予防効果の研究、「とっとり方式認知症予防プログラム」の開発を行う。
「NHKスペシャル」「NHKキャンペーン」「あさイチ」「Eテレきょうの健康」、「たけしの家庭の医学」、「主治医が見つかる診療所」等のテレビ番組にも多数出演し、幅広く精力的に啓発活動を行っている。

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